hitomoshigoro
Douban
overview
1976
[灯ともし頃]
(於・収録アケタの店)
浅川マキ(vo)、荻原信義(g)、吉田 健(b)、白井幹夫(p)、つのだひろ(ds)、坂本龍一(kb)、向井滋春(tb)、近藤等則(tp)、杉田 順(g)
マキの歌はいつだって、夕暮れ時から始まる。
誰もがかえるべき巣にかえる夕暮れ時、どこに帰りつく場所のないものたちは、自らの孤独な道のりを確かめるように、自らの肩を見る。
「Blue Spirit Blues」収録の「灯ともし頃」は、そんな淋しくも強い者たちをさりげなく歌って、美しかったけれども、その歌がタイトルにつけられたこのアルバムも、なんとも寂しげで、負け犬の哀愁の漂う、それでいて心の矜持だけは決して捨てない強いものたちの歌が並んでいて、やっぱりいいアルバム。
アケタの店で、オケとボーカルを同時録音した、というライブ的な勢いのある音。しかもバックを務めるのは、いつものつのだひろ、萩原信義、吉田建らに加えて近藤俊則、坂本龍一と新しい面子もちらほら。
それぞれ実力派のプレイヤーの力強い演奏に、マキはさりげなく、しかし堂々と対峙し、向かい合っている。水際立っているなぁ。
「夕凪の時」で夕闇からはじまり、「それはスポットライトでない」、「思いがけない夜に」と夜の底を徘徊し、「何処へ行くの」でまぶしい朝陽の向こうへと駆け出していく、この流れも、いい。ジャズのスタンダード「センチメンタル・ジャーニー」が、マキとしかいいようのないダルで、根無し草の哀感の漂う一曲になっているのは驚く。 70年代のマキのベストと推す声が多いのも納得の作品。
ちなみに日本のレコーディングエンジニアの第一人者である吉野金次氏が(――以前にも『浅川マキの世界』『裏窓』など、散発的に担当はしていたが)このアルバムから、以降マキの最新作まで全てのマキのアルバムのミキシングを担当することになる。
tracks
1 夕凪のとき
2 あなたなしで
3 それはスポットライトではない
4 夜
5 ジャスト・アナザー・ホンキー
6 思いがけない夜に
7 センチメンタル・ジャーニー
8 何処へ行くの