陰陽師瘤取り晴明
Douban
夢枕 獏
Sinossi
平大成(たいらのおおなり)と中成(なかなり)の双子は、都では有名な薬師だ。彼らには頬にひとつずつコブがあった。ある日、薬草を採りに山に入った大成は道に迷い、偶然鬼たちの遊宴に遭遇してしまうが、命がけで舞い踊った大成は鬼たちに許されて、邪魔なコブを取ってもらう。しかし、鬼たちは彼に半月後、もう一度踊るよう強いる。双子の危機を知った「陰陽師」晴明と博雅は、鬼たちのいる山へと潜入するのだった。
本書は、夢枕獏の公式ホームページ上で連載されたものである。あとがきにもあるように、本書は小説というより、絵本として作られた。村上は、夢枕の「陰陽師」シリーズの装画をずっと担当してきた。夢枕は以前から村上と「本文と絵が等分に入った物語」をやりたいと思っていたという。
民話「コブ取り爺さん」を下敷きにしたストーリーには、いつもの陰陽師シリーズにあるオドロオドロしさはない。むしろひょうひょうとした温かみのある雰囲気に包まれている。それは、ここに収められた村上の40点以上にもおよぶカラー絵によるところが大きい。彼が描く物の怪たちは、どれもひょうきんでかわいらしい。安部晴明や源博雅も、たちまちユーモラスなおじさんになってしまう。
さらに、通常の単行本よりは薄く小さい本のサイズや、表紙の手触りが和紙のそれに似て、いつもと違う雰囲気を肌で感じることができる。(文月 達)