すいかの匂い

Douban
すいかの匂い

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ISBN: 9784101339160
autor: 江国香織
editora: 新潮文庫
séries: 新潮文庫
preço: JPY 400
número de páginas: 230

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江国香織   

visão geral

夏は、いつだって記憶を刺激する。夏には、思い出がたくさんある。視覚、嗅覚、聴覚、味覚、触覚、五感のすべてが夏の思い出を甦らせる。夏の思い出は、楽しくてうれしくて切なくて淋しくて、すこし残酷だ。とくに、子供のころの思い出は。
子供の目から見る世界は、なんだかすごく不安定で、ふわふわしていて、不確かだ。ちょうど、目のまえに水の膜があるかのように、ふにゃふにゃと、歪んで見えた。あのころ、なんでもないことが、とても特別で大切だった。大人になると、忘れてしまうような感覚。きらきらした、不思議なものに惹かれていた。子供の目から見たら、なんだって不思議なのだ。日常のなんでもないことも、いつのまにか、不思議な出来事になっている。
そして、とりわけ、少女というものは、そのころのだれよりも感受性が豊かで、繊細な生き物なのだろう。そして、だれよりも危うく、鮮明に誘惑に心細く、儚い甘さに満ちている。思わず、抱きしめたくなるような、そんな甘さだ。だけど、少女はとても残酷で、恐ろしい。この本には、そうゆう少女の見た不思議な出来事がつまっている。なんだか、それは、不思議だけれど、とてもリアルだ。
思い返せば、もしかしたら、わたしだってこんな経験をしているのかもしれない。よく似た思い出。たとえ、なかったとしても、なんだか、あったような、そんな錯覚を覚える。それらの思い出は、思い出したくもないものかもしれないし、忘れることを約束したものかもしれない。もう二度と、思い出さないように、封印した記憶。秘密にしてしまった記憶。純粋な残酷さをつれて甦る、その記憶に、すこし、ぞくっとするのだ。江國さんの淡々とした文章が、そのぞくっとする感覚を、さらに刺激する。
じっとりと汗ばむ、眩しいくらいのリアルのなかに、夏の匂いがした。

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