道化師の蝶
Douban
円城 塔
résumé
第146回芥川賞受賞作!
無活用ラテン語で記された小説『猫の下で読むに限る』。
希代の多言語作家「友幸友幸」と、資産家A・A・エイブラムスの、
言語をめぐって連環してゆく物語。
SF、前衛、ユーモア、諧謔…すべての要素を持ちつつ、常に新しい文章の可能性を追いかけ続ける著者の新たな地平。
円城塔と申します。
第146回芥川龍之介賞を頂きまして、身辺不意に騒がしくなったりしておりますが、現実感が追いつきません。
すごいな。というのは当今の印刷技術で、既に受賞作が単行本になっています。当初、2月の21日に刊行という噂をamazonで見かけ、それが2月の1日となり、最終的には、1月26日には店頭に並びはじめるらしいということになり。
そんなスケジュールを小説に書くと、リアリティがない、と言われそうです。いくらなんでも1週間と少しで数万部の製本は無理ではないか。こうして実際目にしてみても、「魔法か」という気分が抜けません。
事実を書いてもおかしく見える。リアルに見えない。書き方が悪いのではと考えても、本ができ上がるというだけの話です。他の書き方はむしろない。してみると、言葉というのはどこかおかしなものなのではと思うわけです。
現実に合わせて言葉自体も変わっていくし、読まれ方も変わっていく。
こうして戸惑う自分の言葉は、まだまだ現実に追いつかないな、と思うわけです。
主にそんな戸惑いを軸に書いてきました。もしも著作をお読みいただき、戸惑い、笑って頂けたなら、それ以上の幸せはありません。