ファシズムと冷戦のはざまで
Douban
戦後思想の胎動と形成 1930-1960
三宅 芳夫
overview
戦後世界を築いた思想は、いかに生まれ、どのように繋がり、拡がっていったのか――三木清・竹内好・丸山眞男・松下圭一あるいはサルトルやデリダなど、「ファシズム」と「冷戦」を鍵として剔抉される知識人の思想とその相互連関を、哲学・文学・政治学の縦横な探究のなかから紡ぎ出す。
contents
【主要目次】
序章 二つの戦後思想――ユーラシアの両端で
はじめに/一 渡辺一夫・林達夫・三木清/二 「戦中」の「戦後思想家」たち/三 東京帝国大学法学部・リベラリズム・丸山眞男/四 戦後民主主義
第I部 哲学の批判性
第一章 三木清における「主体」と「系譜学」
はじめに――理論の系譜学/一 カント主義との対決――認識論から存在論へ/二 認識論的切断/三 エピステモロジーと系譜学
第二章 三木清における「系譜学」と「存在論」
はじめに――世界戦争に揺るがされるカント主義/一 系譜学へ/二 『歴史哲学』――「時間」論の展開/三 「主体」と「他者」――「複数性」と「媒介」のアポリア
第三章 留保なき否定性――二つの京都学派批判
はじめに/一 竹内好と京都学派/二 武田泰淳と「世界史」の哲学
第四章 「主体」・「個人」・「実存」――その差異と関係について
はじめに/一 「主体」と「個人」/二 フランスにおける「アナーキズム」の文脈/三 「実存主義」と「個人主義」/四 「対自存在 être-pour-soi」と「主体 sujet」――「自己に関係する」こと/五 「出来事 événement」としての「対自存在」/六 「独我論」批判 ――「関係性」としての「単独性」/七 サルトルの「他者」論/八 暫定的総括/おわりに
第五章 来るべき幽霊、或いはデリダとサルトル
はじめに――幽霊としてのサルトル/一 「物書き écrivain」――「境界」の攪乱/二 「差延」と「時間」/三 「非人称的」な意識――「超越論的場」/四 「意味」――我有化の「不可能性」/五 「痕跡」と「他者」/六 「他者」への「倫理」――「応答」と「贈与」
第II部 文学の可能性
第六章 竹内好における「近代」と「近代主義」――丸山眞男との比較を中心に
はじめに/一 「近代主義」という記号/二 「ナショナリズム」と「国民文学」論争/三 「近代主義」批判としての「近代」/四 丸山眞男における「ナショナリズム」/五 「方法」としての「アジア」/おわりに
第七章 「鉄の殻」への問い――武田泰淳における「民族」への眼差し
一 「冷戦」・「逆コース」と「民族」の前景化/二 資本主義と「民族」――若き日の泰淳/三 『司馬遷』――「不可能性」と「書くこと」/四 再び「女の国籍」へ
第八章 「政治」の不可能性と不可能性の「政治」――荒正人と『近代文学』
はじめに/一 「主体性」論争と『近代文学』/二 荒正人における「不可能性」の思想/三 近代日本思想史における「理念」/四 「不可能性」と「文学」/五 「ミクロ・ポリティックス」の発見/六 「民衆」概念への問い/七 「文学者の戦争責任」について
第九章 外の思考――ジャン=ポール・サルトルと花田清輝
一 「物 オブジェ」に取り憑かれて/二 「物の故郷」への旅――『嘔吐』/三 「物自体 Ding an sich」と「対自存在 être pour soi」
第III部 政治の構想力
第十章 丸山眞男における「主体」と「ナショナリズム」
はじめに――二つの焦点/一 「個人」と「国家」の同時析出/二 「作為」する主体の「転移」と「翻訳」/三 「多元性」と自由の「複数性」/四 国際関係における「ナショナリズム」と「デモクラシー」
第十一章 丸山眞男における「自由」と「社会主義」
はじめに/一 経済自由主義と「全体国家」/二 現代資本主義とファシズム/三 自発的結社――画一性と同質化に抗して/四 「個体性」と「複数性」の擁護
第十二章 「近代」から「現代」へ――丸山眞男と松下圭一
はじめに/一 丸山眞男の転回――「現代」の浮上/二 「戦後啓蒙」と「近代主義」からの離脱/三 「二〇世紀システム」としての「大衆社会」/四 「自由」と「社会主義」――抵抗の戦略/五 「労働運動」と「地域民主主義」――企業統合に抗して