Maggie Lam Chuen — Record Label (1)

Music

Live 1989
Douban
渋谷毅 シブヤタケシ
release date 2000-06-13 publisher: 林泉
実にビッグバンドっぽく、粗削りさが逆に興味深い。渋オケのデビュー盤。 渋オケはとても特異だ。個人の集合体な感じなのに、しっかり一体感がある。気まぐれ自由放題に見えて、しっかり渋谷毅のカラーが出ている。渋谷の作品を一曲も演奏しなくたって、っどっぷり渋オケのサウンドになる。 メンバーはじわじわ変更しているけれど、本質は変わらない。 渋オケは1986年10月に名古屋ヤマハジャズクラブが主催のイベント「高柳昌行の世界」がきっかけという。実際には当日、高柳が体調を崩して廣木光一が代役を務めた。このときはチューバ入りなど編成がいろいろ異なっていたらしい。もうすこし編成を整理して、翌月の11月に新宿ピットインでお披露目が今の渋オケという。 最初の渋オケはメンバー編成が分からない。古澤のWebでは87年に渋オケが始動とあり、メンバー編成は以下の記載あり。 松風紘一(reeds)林栄一(sax)臼庭潤(sax)峰厚介(sax)松本治(tb)石渡明廣(g)川端民生(b) 年月からして違う。誰かの記憶違いなのか、古澤があとから参加したってことか。 本盤は彼らの1stアルバム。当時のジャズとしてはあんがい珍しい、自主製作でCarcoレーベルから発売された。 録音は89年1月28日に新宿ピットインにて。結成から数年。アンサンブルはこなれているはずだが・・・後年の渋オケ盤と聴き比べると、微妙にサウンドが異なっているのが興味深い。 00年代はアケタと新ピで毎月1回づつ演奏してた印象だが、このころはどのくらいライブをこなしていたんだろう。 本盤のメンバーからして前述の顔触れと異なる。4saxに1tbの編成が、本盤では1tp,2sax,1tbに絞られた。さらにギターは二人、石渡は曲によってドラムも叩いたらしい。ギターの廣木はシンセも担当。ジャケットの写真からどんな光景か伺えないが、渋谷がピアノを弾いてるとき、コルグで賑やかしの電子音を足してたのかな。 収録の選曲も後の渋オケと異なる。代表曲の(1)を筆頭に、石渡や松風の曲は既に採用。いっぽうで(4)(5)(6)(7)とスタンダードを多く録音した。ライブではともかく、各自のオリジナル曲を強調したアルバムづくりをこのあと進めるが、少なくとも1stな本盤ではライブの様子をそのまま取り入れたらしい。 面白いのはアレンジや楽曲がぎこちないところ。流麗なグルーヴが楽しい(1)なのに、どうもここでは武骨に聴こえる。この当時はまだ新曲扱いだったのかもしれない。 だが演奏が始まってしまうと、独特な温かいグルーヴに包まれる。ピアノとシンセが同時に鳴る音像は、後年の渋オケに馴染むとちょいと違和感あるけれど。賑やかでしぶといリズム隊に支えられ、分厚いホーン隊が次々にソロを取っていく。 テーマこそ迫力あるが、ソロまわしになったとたん一気に音数が薄く鳴る。奏者のアドリブをグッと強調して、個人の妙技を示すためだ。けれども腕試し合戦にならないあたりが、渋オケらしい。渋谷の人柄ももちろんあるけれど、他流試合でヒリヒリする斬り合いのフリージャズじゃなく、車座になってひとりひとり語り継ぐような温かさがある。 けれどもやたらにまとまったりアレンジがコントロールされていない。自由奔放で個人を尊重しつつ、一体感がある。この独特な大人の集団が渋オケを作った。 オケの存続が第一義でなく、オケと言う場に集まった男たちの穏やかな連帯感が特徴だ。 前述のように本盤はスタンダードも多く取り上げた。自由に動く独特なアレンジをモダン・ジャズの名曲で味わえるのも本盤の魅力か。少なくともビッグバンド風に疾走するテーマからソロ回しに雪崩れる(6)なんて、一連の渋オケ盤では本盤以外で味わえない。 Personnel: 吉田哲治(tp) 松風紘一(bs) 武田和命(ts) 松本治(tb) 廣木光一(g,synth) 石渡明廣(g,ds) 川端民生(b) 古澤良治郎(ds) 渋谷毅(p,org)